6月の投稿で、図書館と著作権・フェアユースについて何回かに分けて書いていくと言っておきながら、さぼっていました。。

 

現在、短大・大学図書館職員の方々と勉強会をしており、以下の文書を皆で翻訳しています。

  • “The Code of Best Practices in Fair Use for Academic and Research Libraries” (pdf)
    • The Association of Research Libraries (ARL), The Program on Information Justice and Intellectual Property (PIJIP), The Center for Social Media (CSM)
    • January 2012

やはり、アメリカの著作権法(特にフェアユース)に関連した内容の文書なので、日本語にはそもそも対応する概念がなかったり、定訳がなかったりします。

何よりもまず、タイトルが曲者です。

The Code of Best Practices in Fair Use for Academic and Research Libraries

「アカデミック・リサーチライブラリーのためのフェアユースに関するベストプラクティスのコード」とオールモスト全部カタカナ語にして、グリーンティー・・・じゃなくてお茶を濁すこともできなくないですし(いや、できない)、「大学・研究図書館のための公正使用に関する最良慣行の規約体系」と高漢字含有率の文書題名表記に逃避可能ですが(いや、ダメ)、ここは少し粘ってみます。

まずは、前半部の「The Code of Best Practices」の部分。「Best Practices」は辞書を引いてみると、「最善(の)措置」「最良(の)慣行」という訳語があるものの、イマイチ堅苦しい上に、結局この訳語自体もテクニカルで馴染みがありません。むしろ最近は「ベストプラクティス」という、カタカナ語の方を耳にするような気もします。「Code」にしても、「規約」「規則」「慣例」といった訳語があり得ますが 1、「ベストプラクティスの規約」というのも、どうにも冗長で、収まりがわるいです。「ベストプラクティス」という語に、「規約・慣例」のニュアンスを含めてしまって、訳出しないというのが今のところ良さそうです。

次は、キーワードというべき「Fair Use」の部分。これは、「フェアユース」でよいでしょう。「公正(な)使用」という語もありますが、「公正」と「使用」の単語の切れ目が見えやすく、何かを「公正」に「使用」することを一般に表すこともでき、「フェアユース」よりも適用範囲が広い語なので、ここはビシッと「フェアユース」で。

最後は、「Academic and Research Libraries」の部分。「Academic Library」は「学術図書館」とも「大学図書館」とも訳されることがあるので、一筋縄ではいきません。まあ、翻訳するときに、どちらかにきちんと統一すればいいのですが。

 

それでは結局、どう訳せばいいのか・・・ここは、おとなしく「規約」、じゃなくて、「既訳」に当たります。タイトルを直接日本語に翻訳したものは見つかりませんでしたが、カレントアウェアネスにこの文書を紹介した記事がいくつかありました。そこでは、「大学・研究図書館の活動におけるフェアユースの適用に関する実務規範を示した文書」とか「大学・研究図書館におけるフェアユースに関するベストプラクティスをまとめた文書」と説明されています。

まず、「code」の部分は端折って(やんわりと回避して)いますね。後者は、「をまとめた文書」のあたりが、概ね「code」に対応していそうですが、明確に訳出されているわけではありません。

Best practice」に関しては前者が「実務規範」と漢字で、後者が「ベストプラクティス」とカタカナですね。「実務規範」は、「code」のニュアンスも取り込んだ、なかなかの妙訳だと思いますが、やっぱりちょっと堅苦しい気もします。私は、「ベストプラクティス」を推します。

そして、「Academic and Research Library」は、両方とも「大学・研究図書館」が使われているので、それを踏襲するのが良さそうです。

最後に細かい点ですが、前置詞「for」を検討します。どちらも(大学・研究図書館(の活動))「における」と表現されています。もちろん、この2つの日本語は、タイトルをそのまま翻訳したものではなく、あくまで説明文なので、forをそのまま訳したわけではありません。「for」をどう処理するかは、意外と難しいところですが、ここは素直に「のための」くらいに訳しておくのがいいでしょうか。この文書の本文を読むと、「における」ともっとゆるやかに処理しておきたくなるのも分かりますが。

 

以上を踏まえると、暫定的な日本語タイトル案として、

大学・研究図書館のためのフェアユースに関するベストプラクティス

とまとまります。でも、まだなんとなくスッキリしないので、今後修正していく可能性は大いにあります。

 

で、ようやく中身の紹介に入ろうかと思いましたが、意外と長くなってしまったので、また次回・・・って、結局、著作権の話をしていないですね。。

 

 

Notes:

  1. ちなみにここでもカタカナ語の「コード」に逃げる手もありますが、一般にカタカナ語で「コード」というと、「符号」やプログラミングの「コード」、あるいは電源の「コード」(これは、cordですが)を指すことが多いので、不適当でしょう。
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