先日、アジア太平洋機械翻訳協会の「第1回AAMT長尾賞 学生奨励賞」をいただきました。

私の専攻は図書館情報学です。しかし、機械翻訳の研究をしています。

「なんでこの分野(図書館情報学)で機械翻訳の研究をしているの?」と、学部の頃から3年間以上問われ続け、「だって情報の多言語流通ってまさに図書館情報学で扱う範囲でしょ」という理念的には正しくも内実の伴わない空疎な返答を朗朗と口にすることに抵抗して、その度に答えにならない答えをもごもごとつぶやき、結局言葉にできないことに自己嫌悪と苛立ちをおぼえつつも、どうにかして言語化してやろうと格闘してできたのが、今回受賞対象となった修士論文「自治体ウェブサイト文書の多言語化を支援する枠組みとシステム環境の研究」です。

はっきり言えば明確な答えは出なかったし、むしろ収拾がつかないまま混乱を深める結果となって、自分としてははなはだ不完全燃焼ではありますが、その足掻いた痕跡からは、確かに研究の核となるようなものが透けて見えたことは疑いようもなく、雑多煮の論文から、それを丁寧に掬い上げてこのような形で評価していただけたことは、この上なく感謝すべきことだと感じています。

授賞式後の懇親会では、長尾真先生とお話することができ、その時「図書館情報学的な立場」についても話題が及び、しかも次の日に「未来の図書館を作るとは」という論文を送っていただきました。その中に「情報図書館学」という節があり、以下のように書かれていました 1

つまりあらゆる情報を図書館学的に整理し、保存するとともに適切な形で利用に供することが必要な時代が来つつある。したがってこれは図書館を情報化する図書館情報学といった狭い概念ではなく、情報を体系的(図書館学的)に整理し、保存し、利用に供するという概念の“情報図書館学”を作ってゆかなければならないのである。(p.59)

「図書館情報学」という語の組み合わせを「情報図書館学」に並び替えただけと思う人もいるかもしれませんが(というよりまさにこのレトリカルな置き換えによってしか思考を進める契機はありえないわけですが)、図書館にとっての情報学、だけでなく、情報にとっての図書館学、という指摘は、意外にも見逃されていたように思います 2。そして私の研究も、いわば機械翻訳を図書館学的な視点から捉え返すことを目指しています 3。この論文を読んで、少しだけもやもやが晴れたような気がします。これからもしばらくは図書館学の立場にこだわりつつ、地道に研究を進めていこうと思います。

私の専攻は図書館情報学(情報図書館学)です。そして、機械翻訳の研究をしています。

 

未来の図書館を作るとは
長尾真, LRG(編)
達人出版会
発行日: 2014-05-27
対応フォーマット: PDF, EPUB

Notes:

  1. 本論文のほぼ同内容を電子化した書籍(長尾真, LRG(編), 達人出版会, 2014年)があったので、そちらから引用します。
  2. これはおそらく、「図書館」という概念と「情報」という概念の想起させる時系列的順序関係(情報の方がなんだか新しそう!?)もしくは包含関係(情報の方がなんだか広そう!?)が、平然と「図書館を情報の視点から見る」ことを強要しているからではないかと思います。違うかもしれませんが・・・。
  3. この論文で長尾先生の提案されている「情報図書館学」の枠組みが、そのまま私の研究に当てはまるわけではないのですが、情報を体系的(図書館学的)に捉える視点は共有しています。
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